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連続テレビ小説「つばさ」ウィークリー・トーク
連続テレビ小説「つばさ」フレーム切手

尚美総合芸術センターとは?
尚美総合芸術センターは、平成21年4月、本学の特色である美の価値創造に関する教育力・研究力を、産官の力と有機的に統合し、生涯学習支援、生涯学習環境づくりに資する調査研究に取り組み、その成果を尚美学園における教育、生涯学習支援、地域間文化交流、異文化交流に活用することで社会へ還元することを目的に、開設されました。

連続テレビ小説「つばさ」ウィークリー・トーク

テレビエッセー『やじろべえ』

執筆: 平原日出夫先生(元NHKチーフプロデューサー/元実践女子大学教授)

第19回
新派悲劇にも条理あり
~第14週「生涯一度の恋だから」~

●「つばさ」オールキャストの新派劇
彼(かれ): いやー、とうとう「つばさ」レギュラー全員のオールキャスト・ドラマになりましたね。
此(これ): 「荒唐無稽(こうとうむけい)」という言葉知ってるね。
彼: ええ、それが何か?
此: 「広辞苑」にはこうある。《とりとめがなく考えに根拠がないこと。でたらめ》とね。
彼: それが今週の作品評ですか?
此: 私は丸ごと否定しているわけじゃない。むしろ、今週の出来は今までになく纏(まと)まりがあり、よく出来ていると思うよ。第79回(月)のオープニングは母加乃子が千代の浴衣をド派手に染め直し、弟知秋がそれを見て「うちは女系だから女の方が強いよね」と言うのが面白い。
彼: ええ、「つばさ」はたしかに女系ドラマですね。
此: 真瀬社長がアンケートから《大衆演劇》を上演することにし、演目は千代が口にした「婦(おんな)系図(けいず)」(泉鏡花)と決定する。彼女が昔川越キネマで見た大衆演劇だね。
彼: 面白いのは、千代が初めに劇中劇の粗筋(あらすじ)をつばさに語っていることです。そうすれば視聴者に筋を説明する手間が省けますから。
此: うん、そうだね。第80回(火)で、真瀬が東京の財団(スポンサー)をみつけて来る。演出・台本の担当は翔太の母佐知江。配役はお蔦(つた)につばさ・加乃子のダブルキャスト。お蔦の相手役の主税(ちから)には真瀬社長。
彼: 第81回(水)ではスポンサーで茶道の家元葛城が現れます。それが何と千代の昔の初恋の人。しかも、浪岡の実父。いやはや、恐れ入谷(いりや)の鬼子母神(きしぼじん)です。
此: しかも、浪岡は千代とデイトした相手。
彼: 因果の糸とはいうけれど、作りすぎですね。いかにもウソっぽい。
此: まあ、それは大目にみましょう。つづく第82回(木)で、いよいよ運命の父子対面。二十年ぶりのご対面。

●二羽のツルが舞う
彼: 葛城(山本学)と千代(吉行和子)の演技は文句なしによかった。「つばさ」では出色の演技でしたね。まさしく何とかにツルです。 
此: たしかに、目から鱗(うろこ)が落ちた感じだね。伝さんはどう思いましたか?
伝: ここでは格が違ってたね。千代の演技も同じくよかった。問題なのは、そのいい演技の千代が第84回(土)では予想外の演技をすること。2幕・3幕の幕間(まくあい)で、つばさは客席の千代を急遽(きゅうきょ)舞台に出演させることを提案する。それで、何と千代は老いさらばえたお蔦として登場し、臨終の場の演技をする。
彼: 僕はこれを見て、バカも休み休みに言えといいたいです。こういうアホなことに乗らないのが千代のハズです。あッ、「広辞苑」の《荒唐無稽》の意味はコレでしたね、此蔵さん。
此: その通り。こういうのを荒唐無稽というんですよ。せっかく、褒(ほ)めようと思ったのに、千代さんをこんなかたちで登場させる感覚を疑います。こういう時、動かされないのが千代の気性であり美学なハズです。心的必然性を無視したデタラメと言うほかない。大衆演劇はこんなものとする傲(おご)りさえ感じられます。
伝: こういう場面が即興的にしろ成り立つと考えること自体が誤りです。作者も演出陣も、ドラマ・笑劇、また小説一般にも心理的な流れや心的必然性なぞは不要だと言わんばかりです。どんなに僅かでも、条理(わけ)がなくては観客は理解したり、笑ったりはできません。せっかく金曜日まで、うまく説得性を持ちこたえられるかなと思いましたが、やはりラストでダメでしたね。
此:ドラマ的飛躍・変貌というのは《デタラメ》と同義語だと錯覚してるんです。断じてそうじゃない。それは因果の連鎖、必然的な結果として表れ出るもの。視聴者はそのことを感覚で察知できるのです。だから、ふり向いたら、今まで聞こえていた足音も人影も消えている・・・。
彼: 気づかないのも寂しいですね。

●踏み込んだわき道
彼: 修正はきかないのですか?
此: もうほぼ収録は済んだろうからね。
彼: そんなに早く撮り終えるものですか?
此: 次回作の収録もありますからね。大幅な修正は無論、小幅でもやらないでしょうね。
彼: それでは、視聴者の意向や希望というのは、全く入り込む余地なぞないわけですね。
伝: 《直す》という概念すらありませんよ。それが可能なのはNHKだけなんですがね、ホントはね。
此: しかし、みずから《非》を認めるようなことは絶対にしないのもNHKですよ。
彼: 形だけではなく、実のある成果を求めて、視聴者参加へ舵を切らないと、NHKはますます危なくなりますね・・・・。
では、この辺でお開きとしましょう。(2009.7.4)

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