交響詩ジャングル大帝2009年改訂版 公式サイト「はじめに:メッセージ〜冨田勲」


手塚治虫さんは大編成のシンフォニーが好きでした。今から45年前(1964)「ジャングル大帝」の音楽打ち合わせの際に、チャイコフスキーの交響曲5番の盛り上がったところを、自らピアノを弾きながら「こういった壮大な広がりをもった音楽がほしい」と。あまりうまくないピアノでしたが、それでもこれから制作するテレビアニメ「ジャングル大帝」に対する手塚さんの思いが、ひしひしと伝わってきたのを覚えています。お互いに まだ30代の若さでした。

あれから半世紀近くを超えて、こうして皆様に新生した『交響詩ジャングル大帝~白いライオンの物語~2009年改訂版』をお聴き頂けることは、作曲家として大きな喜びであります。ご存じのように本作品は1966年に手塚治虫氏の直々の依頼によって私自身が作曲した「子供のための交響詩ジャングル大帝」を、手塚氏生誕80年の本年に、21世紀を担う子供たちのために蘇らせるべく、最新の編曲、録音技術と感性を結集して新たに新生したものです。制作には指揮者の藤岡幸夫氏、日本フィルハーモニー交響楽団の皆さん、パーカッショニストの梯郁夫氏、藤井珠緒氏等、世界最高水準のアーティストが参加し、楽器毎に録音された音源を尚美総合芸術センターのスタッフ達が見事な音場表現でミックスダウンしてくれました。レコード愛好家であった手塚治虫氏に ぜひ聴いて貰いたい逸品です。

そして、手塚氏が何より喜んでくれるだろうと思うことは、この作品が、「子供たちにオーケストラや楽器に親しみを持って欲しい」という手塚氏の思いを強く受け継ぎ、それを最新のメディア表現技術を駆使して具現化している点です。1966年当時は、LPレコードにライナーノーツという形でしか子供たちを音楽や楽器へと誘うことはできませんでしたが、この新生版では、DVDによって手塚氏描き下ろしの16枚の絵と共に音楽を聴いて貰うことが可能になりました。さらに、このDVD版には、ジャズシンガーの綾戸智恵氏がとても楽しいナレーションを付けて下さり、さらに子供たちの心をイマジネーションの世界へと誘います。また、付属するブックレットにスコアの一部が紹介され、その楽器の音だけ抜粋して聴くことができるといった特典も用意されています。こうした教材的な要素は尚美総合芸術センターの研究員達がさらに発展させていく予定で、既に幾つかの小中学校では鑑賞授業が試みられており、今後、教育現場での活用が期待されます。

この場をお借りして、ここまで多大な協力と支援を賜りました学校法人尚美学園とコロムビアミュージックエンタテインメント㈱の皆様、並びに、制作関係者各位に心より御礼を申し上げます。この半年間、制作者一丸となって頑張ってまいりました。世界で初めてカラーアニメの週一本制作を成し遂げた手塚魂が、ここでも反響しているようです。この作品が、天国の手塚治虫氏と、その精神を受け継いだ21世紀の子供たちの心に響き渡ることを願っています。

冨田勲



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